地方経営者と若者を「結ぶ」プロジェクト

2026年度 郡山市 若者による地域資源リノベーション促進事業 主催|郡山市 農商工部 産業雇用政策課

募集期間

9月 — 11月中旬

対象

大学1年生 — 20代前半

参加費

無料

募集期間

9月 — 11月中旬

対象

大学1年生 — 20代前半

参加費

無料

Interview

コミュニティを大切にして賃貸住宅の入居率をあげていきたい。

トラスホーム株式会社

Fハイツ小原田の、空いている部屋に。


郡山市小原田。ある賃貸アパートの道路際に、細い小道が通っています。緑が植えられ、腰を下ろすための石が置いてあります。休石(やすみいし)といいます。

トラスホーム株式会社

井戸もあります。ここは元々は駐車場でした。小道の名前は「こはらだあぜみち」です。

昔の小原田には田んぼが広がっていました。子どもたちは、その間の田んぼの畦道を通って学校へ行きました。その景色を、いまの街なかに作り直したのがこの小道です。

アパートの名前は、Fハイツ小原田です。1986年に建てられた鉄骨造の3階建ての建物で、部屋は30部屋あります。

トラスホーム株式会社

この建物を所有しているのは、トラスホーム株式会社。代表取締役は、古川広毅さんです。2024年、建物の大規模修繕と外まわりの緑化を7か月かけて行いました。

小道も、休石も、井戸も、そのときに作りました。忘れてしまっている、小原田の原風景を思い出し、そこに暮らす人の愛着を育むためです。

ー正直なところ、いまはどんな状況ですか。

古川「かなりの投資をしました。しかし、その後、思うように入居者が増えていません。」

Fハイツ小原田の入居率を上げることは、いま会社にとって喫緊の経営課題です。ただ、交流の場をつくれば埋まる、と古川さんは考えていません。

古川「無理に交流してもらうことが、良いコミュニティだとも思っていません。だから若い方には、『一人で暮らしていても、地域との心地よい接点がある賃貸住宅とは、どんなものだろう?』ということを考えていただきたいです。」

皆さんに渡されるのは、この問いそのものです。イベントでも、情報発信でも、空間の使い方でも、地域の店との連携でもかまいません。空いている部屋を拠点に使えます。

古川「実際に住みながら、一人の入居者としても考えてもらうのも全然ありです。提案で終わらせず、できることを一つでも一緒にやってみたいです。」

200世帯を、自分たちで管理してきた

トラスホームができたのは2010年です。かつての小原田村の範囲にある賃貸住宅は、およそ200世帯あります。管理会社は使わず、一か所を除いたほぼ全部を自分たちで管理してきました。

ー 管理を外注しなかったのは、なぜですか。

古川「農業をやっていたころから、自分たちの手で耕してきました。賃貸住宅の管理を誰かにお願いするというよりも、自分たちで管理していくという意識が強かったです。大変ではありますが、住民と直接つながれているメリットも感じています。」

トラスホームの1階はカフェです。玄関で靴を脱いで上がる作りで、月に一度はスナックになります。

また、2020年には、ロカド香久山という集合住宅を建てました。建物が中庭を囲んで向かい合い、そこを通らないと自分の部屋に入れません。

トラスホーム株式会社

住む人どうしが顔を合わせないよう玄関を分けるのが、集合住宅では普通です。ロカド香久山は、真逆の発想で建てられています。

しかし、建てるときに難色を示したのは銀行でした。共用部が充実しているぶん、部屋数も駐車場も減るため投資分が回収できるか判断しにくかったからです。

古川「たとえ反対されたからといって変えられるかというと、変えられないですよね。これでやるんだ、という想いはありました。」

建ててから6年、退去の理由で多いのは転勤する方と持ち家を建てられた方です。

その持ち家を、ロカド香久山のすぐ近くに建てた方もいました。ここでの暮らしが地域への愛着につながり近くを選んだのなら、一つの正解だと古川さんは考えています。

大家の仕事を、里守(さともり)と呼び直した

郡山市の人口はおよそ30万人です。郊外にある小原田は、かつて宿場町であり農村でもあった地域で、今の駅前のような華やかさはありません。

代表の古川広毅さんの先祖は、江戸時代に新潟から移ってきた農家で、その農地に賃貸住宅を建て始めたのは、3代前の祖父の代からでした。

トラスホーム株式会社

ー継ぐつもりで、最初の就職を選んだんですか。

古川「そこは全く考えていませんでした。両親は継いでほしかったはずですが、好きなことをやったらいい、というスタンスでした。」

日本大学理工学部の建築学科を出て、建築会社に11年勤めます。最後の部署は、工事の見積もりをつくる積算部でした。

当時、建築業界は冷え込み、利益をゼロに近づけないと受注できない見積もりを作り続けます。

古川「自分がやる仕事の意味が、ちょっと分からなくなってしまって。」

古川さんは会社を辞め、家業に戻るのですが、今後の事業の方向を決めるために、いろいろな場所へ情報を集めに行きます。そこで出会ったのが、敷地の中だけで完結させない不動産業の考え方でした。「敷地に価値なし、エリアに価値あり」という話で、人口が縮小する時代に、不動産にはそのエリアの価値を上げる役割があるという考え方です。

古川さんは自分の役割に名前を付けます。「小原田の里守(さともり)」です。

トラスホーム株式会社

ー里守という言葉には、どういう意味を込めたんですか。

古川「小原田に残っている歴史や、環境や、人との関係の調和を図り小原田の里を守っていく。大家としての役割を、そう呼び直したものです。」

コミュニティのつくり方が、まだ分からない

トラスホーム株式会社

一度、Fハイツ小原田でフリーコーヒーのイベントを行いました。それだけで長く続く関係性が生まれるわけではありません。

古川「そもそも若い単身者は、どんなつながりを求めているのか。あるいは、つながりそのものを求めていないのか。そこから分からない部分があります。

だから今回は、若い方に答えを出してもらいたいというより、私たちとは違う目線で、一緒に問い直してほしいと思っています。」

ーアイデアには、どこまで裁量がありますか。

古川「できるだけ自由に考えてほしいです。むしろ、『古川さんが考えているコミュニティって、本当に若い単身者が求めていますか?』くらいのことを言ってもらって構いません。」

建物の管理、安全、お金などは会社が責任を負います。実現できそうなアイデアは、小さくても試します。

受け入れの条件も、取材の最初に聞きました。研修の仕組みはなく、手取り足取りの指導は難しいそうです。

古川「収益につながらないと、会社としては厳しいです。そんなに大きな会社ではないので。」

一緒にやりたい人として古川さんが挙げたのは、「なぜだろう?」と問いを持てる人です。正解がなくても自分なりの仮説を立てられる人、うまくいかなかったことも面白がれる人も挙げています。

不動産の知識は要りません。「自分ならこういう物件を選ぶ」と率直に言う人も歓迎しています。

古川「窓口は、基本的に私です。一緒にFハイツ小原田を見たり、小原田を歩いたり、地域の人を紹介したりしながら考えたい。私自身も若い方から学びたいです。」

3年後に、こう言ってもらいたい

ー3年後、どうなっていたら良い状態ですか。

古川「経営者として正直に言えば、まずFハイツ小原田の入居率が改善していることです。ただ、家賃を下げて満室にする、という話ではありません。小原田での暮らしがいいからFハイツ小原田を選んだ、と言ってくれる人が増えていてほしいです。」

入居者はみな一人暮らしなので、普段はそれぞれの生活をしています。外に出れば顔見知りがいて、近所に行きつけの店ができて、たまにイベントがあれば参加します。

古川さんが「緩やかなつながり」と呼ぶのは、この状態です。そこには一緒に取り組んだ若者も入っています。

トラスホーム株式会社

古川「『自分もFハイツ小原田に関わった』『郡山に行けば会いたい人がいる』と思ってくれていたら、とても嬉しいです。」

ー最後に、若者へ伝えたいことはありますか。

古川「不動産の専門家でなくても構いません。Fハイツ小原田を見て、小原田を歩いて、できれば実際に暮らしてみて、自分だったらこんな場所に住みたい、ということを教えてください。そして、面白いアイデアがあったら、一緒に実際にやってみましょう。」

あぜみちも、休石も、井戸も、もうできています。


Fハイツ小原田の、空いている部屋に、_ _ _ _を。

(2026年8月 取材 松井司)

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会社概要

会社名

トラスホーム株式会社

所在地

福島県郡山市小原田

事業内容

不動産の賃貸と管理

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Organization

2026年度 郡山市
若者による地域資源リノベーション促進事業

発注者

郡山市 農商工部 産業雇用政策課

事業統括

株式会社プレイノベーション

地域事業者連携

株式会社グッドビジネスパートナーズ
(三部会計事務所グループ)

首都圏学生連携

NPO法人ETIC.

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